早生まれは不利?損?-税金面から考える

コラム
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早生まれは不利?

 よく「早生まれは不利」だとか、「早生まれは損」だとか、そういったことを聞きます。実は、私も早生まれの一人です。

 これは、4月生まれから3月生まれの同級生の中で、1月から3月(4月1日も含む。以下同様)生まれの、いわゆる早生まれの子は生まれ月が遅く、どうしても同学年の中で成長が遅くなることから、一般的によく言われています。

 そういったことの研究は専門家にお願いするとして、ここではあくまで税金面で、「有利不利」や「損得」はないのかを考えていきたいと思います。

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そもそも早生まれとは?

 それでは、そもそも早生まれとは何なのでしょうか?

 特に決まった定義などはなく、俗に1月~3月生まれの人を早生まれといいます。

 なぜ、同学年の中で遅く生まれたのに早生まれと言われるか疑問に思います。

 それは、数え年に関係します。

 数え年とは、生まれた瞬間を1歳として、誕生日に関係なく1月1日を迎えるたびに年を取る数え方で、昔は一般的に使われた年齢の数え方とのことです。

 数え年の場合、4月から12月生まれの人は、8歳で小学校に入学するのに対し、1から3月生まれの人は、7歳で小学校に入学することになります。

 そのため、早生まれと言われているようです。早行きや七つ上がりなどとも言われているようです。

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4月1日生まれが早生まれの不思議

 ところで、4月1日生まれがいわゆる早生まれになる、すなわち、同学年の中で一番最後の誕生日になることは一般によく知られていると思います。

 しかし、なぜそうなるかをご存じない方が多いように思います。

 普通に考えれば、年度が4月1日~3月31日で区切られているので、4月1日生まれは次の学年の最初の誕生日の人になりそうなものです。

 ところが、4月1日生まれはいわゆる早生まれだとされています。

 実は、「年齢計算ニ関スル法律」にそのからくりがあります。

学校教育法の規定

 その前に、学校教育法に以下の規定があります。

保護者は、子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。
(学校教育法17①抜粋)

 「満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初め」とありますが、4月1日生まれの人が4月1日に満6歳になるとして、順を追って考えると次のようになるはずです。

  1. 満六歳に達した日・・・○1年4月1日
  2. 満六歳に達した日の翌日・・・○1年4月2日
  3. 満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初め・・・○2年4月1日

 この場合だと、4月1日生まれは早生まれにはなりません。4月2日以降に生まれた人と同じ学年になるはずです。

年齢計算ニ関スル法律

 ということは、何かが間違っているというところで、「年齢計算ニ関スル法律」が登場します。

① 年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス
② 民法第百四十三条ノ規定ハ年齢ノ計算ニ之ヲ準用ス
③ 明治六年第三十六号布告ハ之ヲ廃止ス

 たった3項だけの法律ですが、この法律が重要なのです。

 第1項に「年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス」とありますので、生まれた日が第1日目となります。

 また、第2項に「民法第百四十三条ノ規定ハ年齢ノ計算ニ之ヲ準用ス」とあり、民法第143条には以下の規定があります。

週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。(民法143②抜粋)

 すなわち、○1年4月1日が第1日目である場合に、満1年を迎えるのは翌○2年3月31日ということになり、これは、4月1日生まれの人が年齢を加算されるのは3月31日ということを意味します。

 よって、先ほど見た、4月1日生まれの人の「満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初め」は正しくは以下のようになります。

  1. 満六歳に達した日・・・○1年3月31日
  2. 満六歳に達した日の翌日・・・○1年4月1日
  3. 満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初め・・・○1年4月1日

 これで、4月1日生まれの人はその前日である3月31日生まれ以前の人と同じ学年、すなわち早生まれになることがわかりました。

 「年齢は誕生日の前日に1つ加算される。」このことは、後々にも出てきますので、覚えておいてください。

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早生まれは税金に関係する?

 早生まれが何かが分かったところで、それが税金に関係するのか見ていきたいと思います。

 あまり関係なさそうな気もしますが、実は4月~3月の「年度」と1月~12月の「年」の違いが原因となり、いろいろ影響してくることがあるのです。

 学校は「年度」で動いているのに対し、所得税は「年」が基準となります。そのため、同じ学年(同じ年度に生まれた人)でも、同じ年に同じ年齢を迎えるわけではないというところがポイントです。

 それでは、影響がある項目を順番に見ていきたいと思います。

早生まれは扶養控除を受けられる年数が少なくなる!

 扶養控除とは、一定の親族を扶養している場合に、一定の金額を所得控除として所得から差し引ける制度のことでした。

 今回関係してくるのは、主に子どもを扶養控除の対象とする場合です。

 扶養控除は、対象となる扶養親族の年齢により、その控除額が変わるということでした。

 また、その際の年齢は、その年の12月31日現在の年齢で判定するということでした。

 それでは、生まれてから大学院(2年)を修了するまでの間を具体的に見ていきます。

 ちなみに、1月1日生まれは12月31日に年齢を重ねることになりますので、前年12月31日生まれ以前と同じグループになります。これ以降は、便宜上、4/2~1/1生まれを遅生まれ、1/2~4/1生まれを早生まれと言うことにします。

 16歳未満はいわゆる年少扶養親族となり、扶養控除の対象ではありませんので、間を省略しております。

 また、この表の年齢は、その年12月31日現在の年齢です。

学年遅生まれ(4/2~1/1生まれ)早生まれ(1/2~4/1生まれ)
年齢扶養控除の種類所得控除の金額年齢扶養控除の種類所得控除の金額
所得税住民税所得税住民税
0(年少扶養親族)
1(年少扶養親族)0(年少扶養親族)
省略
中315(年少扶養親族)14(年少扶養親族)
高116控除対象扶養親族38万円33万円15(年少扶養親族)
高217控除対象扶養親族38万円33万円16控除対象扶養親族38万円33万円
高318控除対象扶養親族38万円33万円17控除対象扶養親族38万円33万円
大119特定扶養親族63万円45万円18控除対象扶養親族38万円33万円
大220特定扶養親族63万円45万円19特定扶養親族63万円45万円
大321特定扶養親族63万円45万円20特定扶養親族63万円45万円
大422特定扶養親族63万円45万円21特定扶養親族63万円45万円
院123控除対象扶養親族38万円33万円22特定扶養親族63万円45万円
院224控除対象扶養親族38万円33万円23控除対象扶養親族38万円33万円
省略

 高校、大学、大学院を色分けしてみました。

 この表を見ると、高卒、大卒、院卒のいずれの場合でも、その保護者が扶養控除を受けられる年数が1年少ないことが分かります。

  • 高卒の場合は、控除対象扶養親族が1年少なくなる
  • 大卒の場合は、特定扶養親族が1年少なくなる
  • 院卒の場合は、控除対象扶養親族が1年少なくなる

 留年や浪人がある場合は、その区切りは変わりますが、いずれの場合でも、扶養控除を受けられる年数が1年少ないことには変わりはありません。

 仮に、給与収入500万円で所得税の税率が10%の人が、大卒の子を扶養したとして、遅生まれと早生まれで異なる税負担は以下のようになります。

早生まれの場合、特定扶養親族としての扶養控除を1年受けられない。

所得税:630,000円×10%(所得税の税率)=63,000円

住民税:450,000円×10%(住民税の税率)=45,000円

合計 :63,000円+45,000円=108,000円

 

 このように、子が遅生まれか早生まれかだけで、約10万円も税負担が変わってきます。

 子を扶養するという多くの人が通る道で、これだけの差があるのはいかがなものかと、個人的には思います。

老人も早生まれが損?

 以上は、子を持つ親の立場で見てきましたが、今度は老人について見てみます。

老人控除対象扶養親族、老人控除対象配偶者も年齢基準あり!

 子どもだけでなく、老人にとっても、扶養控除配偶者控除における年齢の問題がつきまとってきます。

 いずれも、70歳という年齢がその境目です。

 これも同じように、その年の12月31日現在の年齢で判定しますので、学生時代に同じ学年だった人のなかで、老人控除対象扶養親族や老人控除対象配偶者になるか、ならないかの違いが出てきます。

 遅生まれの人が70歳を迎える年に、早生まれの人は69歳であり、これも、早生まれが不利になる事柄です。 

公的年金等控除額にも違いあり!

 これまでは、扶養控除や配偶者控除の対象となる者の年齢について見てきました。

 次は、納税者本人の年齢についてです。

 納税者本人の年齢が関係することといえば、公的年金等を受給する場合の「公的年金等控除額」です。

 公的年金等控除額は、65歳を境目に変わります。

 公的年金等控除額の最低額は、65歳未満の場合は60万円、65歳以上の場合は110万円と50万円もの差があります。(公的年金等以外の合計所得金額が1,000万円以下の場合)

 学生時代は同学年で、同じように大卒で就職して、同じように定年退職した場合でも、遅生まれか早生まれかにより、年金にかかる税額が変わってきます。

 遅生まれの人が65歳を迎える年に、早生まれの人は64歳であり、これもまた、早生まれが不利になる事柄です。 

未成年の住民税非課税について

 多くの人には関係ないことだと思いますが、珍しく早生まれが有利な事柄があります。

道府県は、次の各号のいずれかに該当する者に対しては、道府県民税の均等割及び所得割(中略)を課することができない。(後略)
二 障害者、未成年者、寡婦又はひとり親(これらの者の前年の合計所得金額が百三十五万円を超える場合を除く。)
(地方税法24の5①抜粋)(市町村民税にも同様の規定あり、地方税法295①)

 このように、合計所得金額が135万円以下の未成年者は、住民税が非課税になります。

 合計所得金額135万円以下とは、給与所得のみの場合、給与収入が204.4万円未満です。

 通常、給与収入が93万円~100万円程度(市町村により異なる)を超えると、住民税が課税されるところ、未成年者は204.4万円程度まで非課税になるということです。

 現在、成人年齢は20歳ですので、高卒2年目(大学2年生と同学年)の早生まれの方が、ぎりぎり未成年となります。同学年の遅生まれの人は成人を迎えてこの非課税の規定の適用を受けられないところ、早生まれの人は非課税の規定の適用を受けられるということになります。

 ただし、令和4年4月1日に成人年齢が18歳に引き下げられることにより、その対象者は今までにもまして少なくなるはずです。

 ちなみに、未成年かどうかの判定を行うのはその年(住民税は翌年度課税なので所得があった翌年)の1月1日ですので、20歳になる学年の1月2日生まれの人は、1月1日に年齢を重ね成人になることから、この対象にはならず、1月3日生まれ以降の人がその対象になることに注意が必要です。

まとめ

  1. 全体的に、早生まれは税金面で不利!
  2. 特に、子が早生まれの場合の扶養控除の問題は大きい!
  3. 未成年者の住民税非課税の規定は早生まれ(1月3日生まれ以降)が有利。ただし、対象者は少ないのでは?

 

文書作成日時点での法令に基づく内容です。
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