医療費控除の特例、セルフメディケーション税制で、節税する!

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 前回の記事、「医療費控除を正しく知って、節税する!」では、医療費控除の勘違いなどをお伝えしたうえで、医療費控除の対象となる医療費、保険金などで補填される場合はどうするか、また、実際の節税効果と申告方法をお伝えしました。

 その記事の中で、医療費が10万円以下であっても医療費控除の対象となる場合として、「セルフメディケーション税制を使う場合」というものをお伝えしました。

 今回は、セルフメディケーション税制について、お話ししていきます。

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セルフメディケーション税制とは?

 まず、そもそもセルフメディケーション税制とは何でしょうか?

 平成29年から始まった、措法41の17に規定する「特定一般用医薬品等購入費を支払つた場合の医療費控除の特例」のことです。

 健康の保持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行っている方が、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る特定一般用医薬品等を購入した場合、一定の金額の所得控除を受けられる制度です。

 簡単に言うと、病院にかからないように健康増進や予防を行っている方が、病院にかからずに一定の薬を買った場合、すなわち、医療費の増大を防ぐ協力をしている方には、税制面で優遇しましょうということです。

一定の取組とは?

 健康の保持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行っている方が、セルフメディケーション税制の適用を受けられるとのことですが、どういった取組を行っている必要があるでしょうか?

 平成28年厚生労働省告示第181号に以下のように限定列挙されています。(読みやすいように改変しています。)

  1. 医療保険各法等の規定に基づき健康の保持増進のために必要な事業として行われる健康診査又は健康増進事業として行われる健康診査
  2. 定期接種又はインフルエンザ予防接種
  3. 労働安全衛生法などの規定による健康診断(勤務先で行うもの)
  4. 特定健康診査又は特定保健指導
  5. 健康増進事業として行われるがん検診

 サラリーマンの方でしたら、勤務先で健康診断を受けられていることと思いますので、要件を満たすと思います。

 また、それ以外の方であっても、インフルエンザ予防接種を受けられている方は多いでしょう。

 結果として、多くの方が一定の取組を行っていることになると思います。

特定一般用医薬品等とは?

 次に、特定一般用医薬品等とは何でしょうか?

 いわゆる、スイッチOTC医薬品のことなのですが、聞いたことがあるでしょうか?

 

 このようなマークがついている市販の医薬品です。

 これらの医薬品は、元々は医師の処方によらなければ使用することができなかった医薬品のうち、使用実績があり、副作用の心配が少ないなどの要件を満たしたものを、医師の処方なしで購入できるように、一般用医薬品として認可したものです。

 スイッチOTC医薬品を購入すると、レシートに記載される商品名に「セ」や「★」などの記号が付され、その商品がスイッチOTC医薬品であることが分かるようになっています。

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医療費控除の金額

 それでは、セルフメディケーション税制を使った場合の医療費控除の金額はどうなるでしょうか?

 その前に、通常の医療費控除を使った場合の金額をおさらいしましょう。

「医療費の総額」-「保険金等で補填される金額」-「10万円か総所得金額等×5%のいずれか少ない方の金額」=「医療費控除の金額(最高200万円)」

 措法41の17によると、「医療費の」を「特定一般用医薬品等購入費の」と、「10万円か総所得金額等×5%のいずれか少ない方の金額」を「1万2000円」と、また「最高200万円」を「最高8万8000円」と、それぞれ読み替えるということですので、以下のようになります。

「特定一般用医薬品等購入費の総額」-「保険金等で補填される金額」-「1万2000円」=「医療費控除の金額(最高8万8000円)」

 すなわち、スイッチOTC医薬品の購入金額が12,000円を超えた場合、その超えた金額が医療費控除の金額となります。ただし、88,000円が上限です。

 なお、通常の医療費控除と同様、自己の分だけでなく、生計を一にする親族のためにスイッチOTC医薬品を購入した場合も対象になりますので、家族分を合算することが可能です。

通常の医療費控除との選択

 なお、セルフメディケーション税制の適用を受ける場合は、通常の医療費控除の適用を受けることはできません。

 どちらか一方を選択して適用を受けることになります。

 そのため、どちらも適用の要件を満たしている場合、医療費控除の金額が大きくなる方を選択することになります。

通常の医療費

  1. スイッチOTC医薬品に限らず、様々な医療費が対象になる
  2. その一方、10万円(または総所得金額等の5%)を超えなければならず、その超えた部分の金額が医療費控除の金額になる
  3. 最高金額は200万円

セルフメディケーション税制

  1. 対象となるのは、スイッチOTC医薬品のみ
  2. ただし、12,000円を超えればよく、その超えた部分の金額が医療費控除の金額になる
  3. 最高金額は88,000円

 このように、それぞれのメリット、デメリットを把握し、医療費控除の金額がより大きくなる方を選択してください。

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節税の効果は?

 実際の節税効果はどうなるでしょう?

 ここでは、給与収入500万円で所得税の税率が10%の人が、スイッチOTC医薬品を10万円分購入した場合を考えましょう。

医療費控除の金額:100,000円-0円(補填される金額)-12,000円=88,000円

所得税:88,000円×10%(所得税の税率)=8,800円

住民税:88,000円×10%(所得税の税率)=8,800円

合計:8,800円+8,800円=17,600円

 税率が高ければ当然金額が大きくなりますが、それでもあまり大きな節税効果は無いのかなという印象です。

 それでも、通常の医療費控除を受けられない場合や、通常の医療費控除の方が医療費控除の金額が小さくなる場合は、セルフメディケーション税制の適用を受ける価値はあるでしょう。

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控除を受ける方法

 セルフメディケーション税制による医療費控除を受ける場合には、通常の医療費控除と同様、確定申告をする必要があります

 確定申告するにあたっては、以下の書類の添付などが必要です。

  1. セルフメディケーション税制の明細書の添付
  2. 一定の取組を行ったことを明らかにする書類の添付又は提示

セルフメディケーション税制の明細書

 これが、セルフメディケーション税制の明細書です。

 1の「申告する方の健康の保持増進及び疾病の予防への取組」欄には、後述する添付又は提示する書類に関する「一定の取組」の内容を記載します。

 2の「特定一般用医薬品等購入費の明細」欄には、購入したスイッチOTC医薬品について、「購入した薬局名」、「医薬品名」、そして「支払った金額」を記載します。「補てんされる金額」は、あまりないのではないでしょうか?

 そして、金額を合計し、(補てんされる金額を差し引いたうえで、)12,000円を差し引きます。

 これが、医療費控除の金額です。

一定の取組を行ったことを明らかにする書類

 先述のとおり、セルフメディケーション税制の適用を受ける場合には、一定の取組を行ったことを明らかにする書類の添付または提示が必要です。

 その書類については、取組の種類に応じて、厚生労働省のウェブページが詳しいです。


(出典:厚生労働省ウェブページ https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000143635.pdf

確定申告書への記載

 以上の書類を用意したうえで、セルフメディケーション税制の明細書で計算した医療費控除の金額を、確定申告書第一表の左下、「医療費控除」欄に記載すれば、確定申告で医療費控除の適用を受けることができます。

まとめ

  1. 健康増進や疾病の予防として一定の取組を行っている人が、スイッチOTC医薬品を購入した場合、セルフメディケーション税制の対象となる
  2. 購入金額が12,000円を超えればよいため、通常の医療費控除より金額面のハードルが低い
  3. ただし、一定の取組の証明書類が必要であるなど、手続面はハードルが高いうえに、節税効果は大きくない
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