退職所得
ポイントは、「一時に」というところで、退職により過去の勤務に基づき受けるものであっても、定期的、継続的に受けるものは、退職所得ではなく、「雑所得(公的年金等)」とされます。
退職所得の金額
退職所得の金額の計算においては、退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除し、その控除後の残額を1/2した金額とされています。
これは、長い年月にわたって形成された所得であることを考慮して、税負担が軽くなるように配慮されているものです。
ただし、特定役員の退職に係る退職所得は、退職所得控除額を控除されるのみで、1/2されません。(平成25年分以降)
退職所得控除額
一 政令で定める勤続年数(以下この項及び第六項において「勤続年数」という。)が二十年以下である場合 四十万円に当該勤続年数を乗じて計算した金額
二 勤続年数が二十年を超える場合 八百万円と七十万円に当該勤続年数から二十年を控除した年数を乗じて計算した金額との合計額
(所法30③)
勤続年数の計算については、所令69条で規定されていますが、ここでは割愛します。
- 勤続年数が20年以下である場合、40万円×勤続年数
- 勤続年数が20年超である場合、800万円+70万円×(勤続年数-20年)
すなわち、勤続年数が20年までは、1年につき40万円、20年を過ぎてからは、1年につき70万円となります。
例えば、22歳から60歳まで38年間勤続した場合の退職所得控除額は、800万円+70万円+(38年-20年)=2,060万円となり、2,060万円までの退職金であれば、所得税は(住民税も)課税されないことになります。
退職所得控除額の別段の定め
一 その年の前年以前に他の退職手当等の支払を受けている場合で政令で定める場合 第三項の規定により計算した金額から、当該他の退職手当等につき政令で定めるところにより同項の規定に準じて計算した金額を控除した金額
二 第三項及び前号の規定により計算した金額が八十万円に満たない場合(次号に該当する場合を除く。) 八十万円
三 障害者になつたことに直接基因して退職したと認められる場合で政令で定める場合 第三項及び第一号の規定により計算した金額(当該金額が八十万円に満たない場合には、八十万円)に百万円を加算した金額
(所法30⑤)
- 前年以前4年内(前に受けた退職手当等が確定拠出年金の場合は14年内)に他の退職所得手当等を受けている場合は、一定の調整計算が行われます。(所令70①二)
- 退職所得控除額の最低額は80万円とされています。(勤続年数が1年の場合は、40万円ではなく80万円となります。)
- 障害者になったことに直接起因して退職した場合、通常通り計算した退職所得控除額に100万円が加算されます。
特定役員とは
一 法人税法第二条第十五号(定義)に規定する役員
二 国会議員及び地方公共団体の議会の議員
三 国家公務員及び地方公務員
(所法30④)
上記のとおり、特定役員とは、法人の役員、国会議員や地方議員、および公務員で勤続年数が5年以下である者をいいます。
そして、第2項に規定のとおり、これら特定役員に対する退職所得には、1/2課税の恩恵がありません。
これは、そもそも公務員の天下りに対する課税強化の目的で、平成25年分から導入されたものですが、一般企業の役員も対象となることに注意が必要です。
死亡退職金はどうなる?
在職中に死亡することで、遺族に対して死亡退職金が支払われることがあります。この場合は、どうなるのでしょうか?
二 被相続人の死亡により相続人その他の者が当該被相続人に支給されるべきであつた退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与(政令で定める給付を含む。)で被相続人の死亡後三年以内に支給が確定したものの支給を受けた場合においては、当該給与の支給を受けた者について、当該給与(相法3①二)
相続税法において、死亡退職金は相続人(遺族)が相続(又は遺贈)により取得したものとみなされています。ですので、死亡退職金は相続税の対象となることが分かります。
それでは、所得税は課税されないのでしょうか?
十六 相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの(相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)の規定により相続、遺贈又は個人からの贈与により取得したものとみなされるものを含む。)(所法9①十六)
所得税法において、相続により取得したとみなされるものは非課税とされていることから、所得税は課税されません。
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