上場株式等の配当等

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上場株式等の配当等

 これは、分離課税用の申告書です。「上場株式等の配当等」の文字が見えます。

 配当は、配当所得ではないのか、と思われた方。

 それは大正解です。

 配当所得は、原則は「総合課税」とされています。

 ただし、上場株式等の配当については、配当所得なのですが、「分離課税」を選択することができるのです。

上場株式等

 それでは、上場株式等とは何なのでしょうか?

 詳細は、こちらで説明していますので、興味のある方はご覧いただくとして、一般的なものは以下のものです。

  1. 金融商品取引所に上場されている株式等
  2. 公募投資信託の受益権
  3. 国債及び地方債
  4. 外国又はその地方公共団体が発行し、又は保証する債券
  5. 外国金融商品市場において売買されている株式等

 すなわち、国内、国外を問わず、金融商品市場で売買されている株式や公募投資信託、それに加え、これも国内、国外問わずですが、国債等の債券が該当します。

配当等

 
 ここで、債券から受けるものは配当ではなく、利子ではないかと思われた方。

 ご名答です。

 配当等の「等」には、債券から受ける利子が含まれております。

 利子は、「利子所得」なのですが、特定の利子所得は、上場株式等の配当と同じ課税方法がとられています。

居住者又は恒久的施設を有する非居住者が、(中略)利子等((中略)一般利子等、(中略)国外一般公社債等の利子等その他政令で定めるものを除く。(中略))又は(中略)配当等((中略)私募公社債等運用投資信託等の収益の分配に係る配当等、(中略)国外私募公社債等運用投資信託等の配当等その他政令で定めるものを除く。(中略))で次に掲げるもの(以下この項、次項及び第四項において「上場株式等の配当等」という。)を有する場合には、当該上場株式等の配当等に係る利子所得及び配当所得については、(中略)他の所得と区分し、(中略)「上場株式等に係る配当所得等の金額」(中略)に対し、上場株式等に係る課税配当所得等の金額(中略)の百分の十五に相当する金額に相当する所得税を課する。この場合において、当該上場株式等の配当等に係る配当所得については、同法第九十二条第一項の規定は、適用しない。
(措法8の4①抜粋)

 ここで、「一般利子等」とは、預貯金の利子を思い浮かべていただければ結構です。預貯金の利子は、「源泉分離課税」と言って、支払時に所得税15%と住民税5%の源泉徴収がされ、これで課税が完結するため、申告ができないこととされています。

 それに対し、債券などの利子は利子所得であるにもかかわらず「申告分離課税」とされ、上場株式等の配当と同じように課税されることになっています。

税率

 上場株式等の配当等にかかる税率は、15%です。

配当控除の適用可否

 「当該上場株式等の配当等に係る配当所得については、同法第九十二条第一項の規定は、適用しない。」とあります。

 所得税法第92条、すなわち、配当控除の規定の適用は受けられません。

 なお、「当該上場株式等の配当等に係る配当所得」とあるように、利子所得には元々配当控除はないため、配当所得「等」とはされていません。

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総合課税は選べるのか?

 これまで見てきたところでは、上場株式等の配当等は、分離課税の方法で課税されるように思います。

 それでは、総合課税とすることはできないのでしょうか?

 実は、上場株式等の配当等に係る配当所得については、総合課税を選ぶこともできるのです。

前項の規定のうち、上場株式等の配当等で同項第一号から第三号までに掲げるもの(中略)に係る配当所得に係る部分は、居住者又は恒久的施設を有する非居住者がその年中に支払を受けるべき特定上場株式等の配当等に係る配当所得につき前項の規定の適用を受けようとする旨の記載のある確定申告書を提出した場合に限り適用するものとし、居住者又は恒久的施設を有する非居住者がその年中に支払を受けるべき特定上場株式等の配当等に係る配当所得について所得税法第二十二条及び第八十九条又は第百六十五条の規定の適用を受けた場合には、その者がその同一の年中に支払を受けるべき他の特定上場株式等の配当等に係る配当所得については、同項の規定は、適用しない。
(措法8の4②)

 「上場株式等の配当等で同項第一号から第三号までに掲げるもの」、これは上場株式の配当金、公募投資信託の分配金、および特定投資法人の配当をいいますが、これらの配当所得について、分離課税の課税を受ける申告をした場合のみ適用されると規定されています。

 すなわち、「分離課税を選びます」という申告をしない限り、総合課税の方法で課税されるということです。

 それでは、この配当は総合課税、この配当は分離課税というように、両方の課税方式を併用することはできるのでしょうか?

 実は、それはできないのです。

 「その年中に支払を受けるべき特定上場株式等の配当等に係る配当所得について所得税法第二十二条及び第八十九条又は第百六十五条の規定(注:総合課税)の適用を受けた場合には、その者がその同一の年中に支払を受けるべき他の特定上場株式等の配当等に係る配当所得については、同項の規定(注:分離課税)は、適用しない。」とあるように、総合課税の適用を受ける配当所得がある場合は、すべて総合課税の適用を受けなければならず、逆に、分離課税の適用を受けるなら、すべて分離課税の適用を受けなければならないこととされています。

 ただし、当然のことながら、上場株式等の配当等に係る利子所得については、総合課税の適用を受けることはできず、分離課税の適用を受けるのみとなることにご留意ください。

 ところで、総合課税と分離課税、いずれかを選べるということであれば、それぞれにメリット、デメリットがあることになります。(実は、もう一つ、申告不要を選ぶこともできます。)

 これについては、改めて別記事に記載する予定です。

 

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