超過累進税率の不思議-実質税率は?

コラム
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所得税は超過累進税率

 いきなりですが、所得税は超過累進税率を採用しています

 と言われて、どうでしょう?

 意味を完全に理解できているでしょうか?

 今回は、超過累進税率について、間違いや勘違いしそうな点を中心に考えていきたいと思います。

 というところで、この表がないとわかりにくいと思うので、所得税の税率表(速算表)を載せておきます。

課税所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円超 330万円以下10%97,500円
330万円超 695万円以下20%427,500円
695万円超 900万円以下23%636,000円
900万円超 1,800万円以下33%1,536,000円
1,800万円超 4,000万円以下40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円

 
 例えば、課税所得金額が500万円として、5,000,000円×20%-427,500円=572,500円と計算します。

 詳細は、所得税の計算構造をご覧ください。

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超過累進税率とは

 さて、超過累進税率とは何でしょう?

 これは、「超過」と「累進税率」に分けて考えるとわかりやすいです。

 順番は逆になりますが、まずは「累進税率」から見ていきましょう。

累進税率とは

 税率と付いていることから、課税標準(税金の計算対象となる金額)に掛ける割合であることは分かると思います。

 例えば、消費税の標準税率は10%ですが、これは税抜の本体価格に10%を掛けて、消費税の額を計算するということです。

 他にも、課税所得金額に係る住民税は一律10%ですが、これも課税所得金額に10%を掛けて住民税の金額を計算します。

 これらのように、課税標準の多寡にかかわらず(課税標準が大きくても小さくても)、税率が変わらないものを単一税率といいます。

 それに対し、課税標準が大きくなるにつれて、税率が段階的に高くなっていくものが累進税率です。

「超過」の意味

 ところで、仮に100万円以下は10%、100万円超は20%という累進税率があったとします。

 100万円を超えると全体が20%になるとしたらどうでしょう?

 100万円ちょうどの場合は、1,000,000円×10%=100,000円となりますが、100万1千円になったら、1,001,000円×20%=200,200円となります。

 たった千円超えただけなのに、税金が大きく変わります。これは不条理ですよね。

 ということで、それを防ぐための仕組みが超過累進税率です。

 先ほどの例で言うと、100万円までは10%、100万円を超えた分だけが20%の税率となる方法で、1,000,000円×10%+1,000円×20%=100,200円と計算します。

 超過した部分だけ税率が上がる。これが超過累進税率です。

 これなら納得ですね!

 所得税で言うと、課税所得金額が195万円のところに一つ目の壁があります。

 195万円以下は5%、195万円超は10%となります。

 たまに、勘違いされている方がいらっしゃいますが、「195万円を超えると10%になるから、何とか195万円以下に抑えないと!」というのは特に意味のないことで、195万円を超えても超えた分だけが10%になるだけなので、少し超えただけだったら、実質税率はほぼ5%と変わらないということになります。

 これと同じことで、「課税所得金額が4千万円を超えたら税率が最高税率の45%だ」といいますが、これも超えるまでの部分は(段階的に上がっていますが)低い税率が適用されているわけです。

 (今回のテーマとは関係ないですが、たった1円超えただけで受けられなくなる控除などいろいろあるので、そういった場合は注意が必要です。)

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所得税の実質税率

 このことを踏まえて、所得税の実質税率はどうなるのでしょうか?

 ある段階を超えると税率は上がるのですが、それはその段階を超えた分だけで、それまでの分は低い税率が適用されます。

 ですので、所得が大きくなるにつれて、税率が上がっていくのはその通りなのですが、例えば195万円を超えたところで一気に上がるということではなく、なだらかな曲線を描きながら上がっていくはずです。

 それをグラフにしたのが下の図です。

 課税所得金額が1億円のところまで載せてみましたが、ちょっとわかりにくいですね。

 ただ、課税所得4千万円以上は所得税率45%ですが、1億円の実質税率は40%くらいということが分かります。

 今度は、1千万円のところまで載せてみました。

 これだと、195万円、330万円、695万円、900万円くらいのところでグラフの傾きが変わってそうなことが分かります。

 ちょうど、そこが税率の変わり目です。

 195万円までは5%なのですが、それ以降は、段階を超えた分のみ税率が変わりますので、実質税率はこのようになります。

 課税所得金額1,000万円というと、所得税率33%が適用されるゾーンなのですが、このグラフを見ると、実質税率は約18%ということが分かります。18%が高いか低いかはおいといて、33%という数字とは大きく乖離していることが分かります。

 このように、所得税の税率を考えるときには、実質税率も合わせて考える方がいいでしょう。

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実質税率表

 ご参考までに、実質税率表を作りましたので、よろしければご覧ください。

課税所得金額所得税額実質税率適用税率
1,000,00050,0005.0%ここまで5%
1,950,00097,5005.0%
2,000,000102,5005.1%ここまで10%
3,000,000202,5006.8%
3,300,000232,5007.0%
4,000,000372,5009.3%ここまで20%
5,000,000572,50011.5%
6,000,000772,50012.9%
6,950,000962,50013.8%
7,000,000974,00013.9%ここまで23%
8,000,0001,204,00015.1%
9,000,0001,434,00015.9%
10,000,0001,764,00017.6%ここまで33%
12,000,0002,424,00020.2%
14,000,0003,084,00022.0%
16,000,0003,744,00023.4%
18,000,0004,404,00024.5%
20,000,0005,204,00026.0%ここまで40%
30,000,0009,204,00030.7%
40,000,00013,204,00033.0%
50,000,00017,704,00035.4%45%
100,000,00040,204,00040.2%
200,000,00085,204,00042.6%
500,000,000220,204,00044.0%
1,000,000,000445,204,00044.5%

まとめ

  1. 超過累進税率とは、段階を超えた部分のみ税率が上がる仕組み
  2. そのため、適用税率と実質税率は乖離している
  3. 課税所得1,000万円の実質税率は約18%

 

文書作成日時点での法令に基づく内容です。
平成25年から令和19年まで所得税額の2.1%の復興特別所得税が課税されますが、特別に説明が必要な場合を除き、説明の簡便化のため、省略しております。
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