チキン南蛮物語 〜宮崎生まれの洋食、その誕生と進化〜

コラム
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 みなさん、「チキン南蛮」と聞いて、何を思い浮かべますか? サクッとした衣に包まれたジューシーなチキン、その上にかけられた酸味のきいたタルタルソース。この組み合わせに、思わず食欲をそそられる方も多いのではないでしょうか。実は、このチキン南蛮、日本生まれの洋食なんです。その誕生秘話や魅力について、今日は詳しくお話ししていきましょう。

 チキン南蛮の発祥の地は、宮崎県延岡市です。その誕生には諸説あり、興味深い歴史があります。

 主に二つの説があります。一つは「お食事の店 直ちゃん」を元祖とする説。もう一つは「おぐら」を元祖とする説です。実は、「おぐら」の方が約5年早くチキン南蛮を提供していたことがわかっています。

 「おぐら」は昭和32年(1957年)に創業し、チキン南蛮の販売を昭和40年(1965年)頃に始めました。創業者の兄、甲斐照幸氏が考案したとされています。興味深いのは、タルタルソースの発想。スルメイカにマヨネーズをつけて食べるところからヒントを得たそうです。

 一方、「直ちゃん」は昭和40年頃に創業し、チキン南蛮の販売を昭和45年(1970年)頃に始めました。創業者の後藤直氏は、かつて延岡市内にあった洋食店「ロンドン」で出されていた賄い料理からヒントを得たといわれています。「直ちゃん」のチキン南蛮の特徴は、タルタルソースを使用せず、秘伝の甘酢を染み込ませている点です。

 両店の関係者や大学関係者、料理研究家などによる「チキン南蛮発祥の地宣言シンポジウム」が2009年に開催されるなど、延岡市はチキン南蛮発祥の地として、この料理を大切にしています。

 現在、宮崎県内外では主にタルタルソースと甘酢ダレを併用するスタイルが広まっていますが、これは「おぐら」のスタイルがベースになっていると言えるでしょう。

 では、なぜ「南蛮」という名前がついたのでしょうか? 実は、「南蛮」という言葉には深い歴史があります。元々は16世紀頃、南方からやってきた外国人を指す言葉でした。特に、ポルトガルやスペインからの来訪者を「南蛮人」と呼んでいたのです。彼らがもたらした料理や調理法は「南蛮料理」と呼ばれ、日本の食文化に大きな影響を与えました。

 その中でも、酢を使った調理法は「南蛮漬け」として広く知られるようになりました。チキン南蛮も、この伝統を受け継いでいるのです。酢を使ったソースで味付けすることから、「南蛮」の名が付いたと考えられています。

 しかし、チキン南蛮の特徴はそれだけではありません。最大の特徴は、なんと言ってもタルタルソースでしょう。サクサクの衣とジューシーなチキン、そして酸味のある甘酢ダレ。この三者に、コクのあるタルタルソースが加わることで、絶妙な味のハーモニーが生まれるのです。

 タルタルソースの起源は諸説ありますが、一般的にはフランス料理のソースだと考えられています。日本では、明治時代に西洋料理と共に伝来したとされています。チキン南蛮にタルタルソースを合わせるというアイデアは、まさに和洋折衷の妙と言えるでしょう。

 チキン南蛮が全国区の人気メニューになったのは、比較的最近のことです。2000年代に入ってから、B級グルメブームと共に注目を集めるようになりました。宮崎県の郷土料理として紹介されることも増え、多くの人々の舌を魅了していったのです。

 現在では、ファミリーレストランやファストフード店のメニューにも登場し、家庭でも人気の料理となっています。また、ご当地バージョンも各地で生まれています。例えば、名古屋では「手羽先」を使った「手羽先南蛮」が人気です。

 チキン南蛮の魅力は、その多様性にもあります。基本は揚げたチキンに甘酢ダレとタルタルソースですが、チキンの部位や衣の付け方、甘酢ダレの配合、タルタルソースの具材など、お店や家庭によって様々なバリエーションがあります。

 例えば、チキンは胸肉を使うお店もあれば、もも肉を使うお店も。衣は薄めのものから、カリカリの厚めのものまで。甘酢ダレも、甘めのものから酸味の強いものまで幅広く、タルタルソースに至っては、玉ねぎやピクルスの刻み方、マヨネーズとの配合など、こだわりのポイントは尽きません。

 近年では、健康志向の高まりを受けて、揚げずに焼いた「焼きチキン南蛮」なども登場しています。また、ベジタリアン向けに豆腐や蒟蒻を使った「ベジ南蛮」なども考案されており、チキン南蛮の概念自体が進化を続けているのです。

 さらに、チキン南蛮は家庭料理としても人気です。材料が比較的安価で手に入りやすく、調理も難しくないため、多くの家庭で作られています。特に、子供から大人まで幅広い年齢層に好まれるため、家族の食卓を彩る定番メニューの一つとなっているのです。

 ただし、家庭で作る際の悩みの種は、やはり「揚げ物」であること。油はねの後片付けが大変だったり、カロリーが気になったりと、ハードルが高いと感じる方もいるでしょう。そこで最近では、フライパンで作れるレシピや、オーブンを使ったレシピなども人気を集めています。

 チキン南蛮は、日本の食文化の豊かさを象徴する料理の一つと言えるでしょう。西洋の調理法や味付けを取り入れながら、日本人の味覚に合わせてアレンジされた。その過程には、日本人の柔軟な食文化受容の姿勢が表れています。

 また、地方発祥の料理が全国区となり、さらに各地でアレンジされていく。この現象は、日本の食文化の多様性と創造性を示しているとも言えるでしょう。

 さて、今晩の夕食は何にしますか? たまには手作りのチキン南蛮はいかがでしょうか。あるいは、お近くの洋食店で、シェフこだわりのチキン南蛮を味わうのも良いかもしれません。サクサクの衣、ジューシーなチキン、酸味のきいた甘酢ダレ、そしてコクのあるタルタルソース。この絶妙な味の組み合わせが、きっとあなたの舌を楽しませてくれることでしょう。

 

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